まるわかり!『チェネレントラ』~水谷彰良さんによる作品解説 Vol.3『物語と音楽』

日本ロッシーニ協会会長の水谷彰良さんによる作品解説の第3弾。『チェネレントラ』の物語がどのような音楽で表現されているのかがわかります。聴きどころをつかむにはこれ!

     

オペラの専門用語は新国立劇場「BRAVO!オペラに行こう!オペラの用語辞典」が参考になります

Vol.3 物語と音楽

題名:チェネレントラ(La Cenerentola)
作曲:ジョアキーノ・ロッシーニ(Gioachino Rossini,1792-1868)
台本:ヤーコポ・フェッレッティ(Jacopo Ferretti,1784-1852)
初演:1817年1月25日 ローマ、ヴァッレ劇場

序曲 (旧作の喜歌劇《新聞》1816年ナポリ初演の序曲を転用したシンフォニア)

     

【第1幕】      

N.1 導入曲        

ドン・マニフィコの古びた屋敷の広間。ダンスの練習とお洒落に夢中な継姉をよそに、アンジェリーナは炉端でカンツォーネ「昔、一人の王様がおりました」を歌う。物乞いの男(変装したアリドーロ)に施しをして姉たちに叱られたアンジェリーナは、王子の従者たちから王宮に招かれた姉たちの指図に振り回される。

                 

N.2 マニフィコのカヴァティーナ        

騒ぎで眼を覚ました男爵が、翼のはえたロバが空を飛ぶ夢を見たと歌う(「わが子孫たる娘たち」)。ロバは自分、娘が王妃となって孫を生む前兆だと喜ぶ男爵の愚かさが、同音反復や擬音を交えた旋律で強調される。

     

N.3 チェネレントラとラミーロの二重唱        

弦のピッツィカートの序奏に続いて従者の姿をしたラミーロが現れる。見知らぬ男を見て驚いたアンジェリーナがカップを落とし、二重唱「何か判らぬ甘美なものが」が優美に歌いだされる。アレグロの後半部は華麗なアジリタ(敏捷な歌唱法)を駆使して歌われる。

     

N.4 ダンディーニのカヴァティーナ

王子に扮したダンディーニが家臣を連れて現れ、合唱に続くカヴァティーナ「4月の日々の蜜蜂のように」で偽者ぶりを観客にアピールする。拍子とテンポを変えた後半部では、細かな音型をアジリタで歌う。

N.5 五重唱        

舞踏会に行けないアンジェリーナの懇願「ご主人さま、ひと言だけ」で始まるアンサンブル。侮辱的な言葉に怒るダンディーニとラミーロ、戸籍簿を示されても「彼女は死んだ」と嘘をつく男爵の厚顔ぶりなど人物の性格がクローズアップされ、五人それぞれが興奮して早口でまくし立てるストレッタで締め括る。

      

N.6a アリドーロのシェーナとアリア        

1820年12月のローマ再演用に作曲し、アゴリーニの楽曲と差し替えたレチタティーヴォとアリア「深い神秘に支配される天の」。アリドーロの思慮深さと道徳性を示す名曲。

アリドーロのアリアのロッシーニ自筆楽譜(1821年。ロッシーニ財団所蔵。資料提供:水谷彰良氏)
     

N.7 第1幕フィナーレ       

舞台をラミーロの宮殿の一室に変えての長大なフィナーレ。次の五つの部分からなる。
a) 酒蔵係に任命されたマニフィコによる合唱付きのアリア。
b) ダンディーニとラミーロのスピード感あふれる二重唱「しっ、しっ、静かに、静かに」。
c) 短い合唱と、アリドーロから正体不明の貴婦人の来客を告げられた四人の困惑。
d) 淑女を迎える合唱、謎の女性の第一声「贈り物は結構です」と彼女の美しさに魅せられた人々の驚き。
e) 豪華な食事を前に、全員が狂騒状態に陥る終結部「夢を見ているよう」。劇的状況に合わせて音楽が変化し、序
  曲のクレシェンドと歌を合体させた活気あふれる音楽で閉じられる。

【第2幕】(註)アゴリーニ作曲の冒頭合唱(N.8)はカット。      

N.9 マニフィコのアリア        

ラミーロの宮殿の広間。男爵は謎の美女がチェネレントラそっくりなのを不審に思いつつ、娘の一人が王妃になれば良い暮らしができると想像する(「娘のどちらでも」)。

                 

N.10 ラミーロのレチタティーヴォとアリア        

偽王子に言い寄られたアンジェリーナが従者への愛を告白するのを聞いたラミーロが歓喜し、腕輪の片方を渡して姿を消した彼女を探し出そうと決意する(「そう、誓って彼女を見つけ出す」)。

     

N.11 ダンディーニとマニフィコの二重唱        

偽王子をお役御免となったダンディーニは「自分はただの召使です」と告白し、慌てふためく男爵を愚弄する(「重要な秘密を」)。二人のバスによる、ロッシーニならではの愉快な二重唱。

     

N.12 チェネレントラのカンツォーネ

再びマニフィコの屋敷の広間。アンジェリーナの「昔、一人の王様がおりました」は第1幕と同じだが、ここでは従者への思いを込めて歌われる。

N.13 嵐        

帰宅したマニフィコと継姉たちのレチタティーヴォに続いて管弦楽が演奏する嵐の音楽。

                 

N.14 六重唱        

アンジェリーナに腕輪の片方を認めたラミーロの「あなたですね?」の問いかけで始まる六重唱。巻き舌のrを含む「グルッポ(gruppo)」「ズグルッパ(sgruppa)」の言葉が面白い効果を醸し出し、嫉妬する姉妹や狼狽する男爵の思いが交錯する早口の爽快なアンサンブルで締め括る。

     

N.15 クロリンダのアリア        

ロッシーニの協力者ルーカ・アゴリーニ作曲のアリア「みじめだわ! 私は信じていたのに」。通例カットされるが、今回の公演で歌われる。

22歳のアルボーニがコヴェントガーデン歌劇場で演じたチェネレントラ
(『絵入りロンドン新聞』1848年6月17日付。水谷彰良氏所蔵)
     

N.16 第2幕フィナーレ:合唱とチェネレントラのシェーナ

玉座のある広間。善良さの勝利を称える合唱に続いて、ラミーロから「妻よ…」と呼ばれたアンジェリーナが感極まる。家族の高慢さを非難しかけた王子を制止し、「皆を許すことが私の復讐です」と語った彼女は「苦しみと涙のうちに生まれ」と抒情的に歌いだし、装飾歌唱の粋を凝らした華麗なロンド「もう火のそばで寂しく」を高らかに歌い、喜びのうちに幕を下ろす。

Vol.4『お薦めDVD』に続く

        

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より詳しい解説は日本ロッシーニ協会のホームページ

公演の詳細はフェスティバルホール

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