ソリストが3人が語る「カルミナ・ブラーナ」。青山貴(バリトン)、老田裕子(ソプラノ)、清水徹太郎(テノール)

大植英次指揮オオサカ・シオン・ウインド・オーケストラの「カルミナ・ブラーナ」でソリストを務める3人に、作品への思いを語っていただきました。

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「圧倒的な音楽に飲み込まれてしまわないよう、玉砕覚悟で挑みます」バリトン・青山貴

―― これまで「カルミナ・ブラーナ」を歌われた経験は、何回くらいお持ちですか。印象に残った思い出があればお聞かせください。

5、6回ほど歌っております。初めて歌った時はやはりものすごく緊張しました。当時まだ修了間近の(東京藝術大学)大学院生でした。本番は2000年11月、翌12月が修士論文の提出期限。合唱も歌った事が無いのにいきなりソロの機会となりました。
必死に論文にも取り組みながら、師匠(テノール歌手の鈴木寛一教授)に頼んでレッスンを何度もして頂きました。とにかく難易度が高いです。音域も広く、低いところから超高音、求められる表現の幅の広さ、バリトンなのにファルセットを駆使して歌う部分もあります。バリトンソロだけ他のソロよりも歌う量が多いです(汗)!
テノールソロとして数々のバリトンの隣で歌われた師匠から特訓を受け、何とか最後まで歌えたのは得難い経験となりました。


近年では、2017年夏に新日本フィルさんと歌わせて頂いた時の上岡敏之マエストロの指揮は忘れる事が出来ません。完全暗譜をされ、常に鋭い眼光で演奏者全体を掌握し、動きの一つ一つが、まるで一瞬で物語に引き込まれるかのようでした。空間を切り裂く様にラストの「おお運命の女神よ」に入っていかれたのが強烈に印象に残っています。

――この作品とご自身のパートについて、どんな風にとらえていますか。

カルミナ・ブラーナは、宗教的な内容と世俗的な内容が入り混じり、神、春、酒、愛が大きなテーマです。壮大な250編の詩の中から、オルフが選んだ24の詩に曲が付けられました。中世の人々の人物像、生活が色濃く描かれ、どの曲もエネルギーに満ち溢れています。
女神を讃える人々、不満をぶちまける若者、飲みながら偉そうに悟る大僧正、愛の苦しみを吐露する男、乙女への求愛〜愛の成就〜歓喜。この場面や人物像が目まぐるしく変わって行く様子を、なるべくはっきり演じ分けるように歌いたいです。古代を思わせる音楽、力強いリズムが取り入れられ、メロディが何度も反復されてどんどん盛り上がっていきます。
この圧倒的な音楽に飲み込まれてしまわないように、しかしある意味玉砕覚悟で、その音楽に挑んでいくような気持ちも必要だと思っています。

――今回は吹奏楽との共演です。

吹奏楽版で演奏するのは初めてです。大変珍しい機会では無いかと思います。管楽器中心の編成ですから、やはりすごいボリューム、また違った形のエネルギー、魅力が生まれるかと思います。とても楽しみにしております。
昨年のロッシーニ『泥棒かささぎ』公演に引き続き、大阪国際フェスティバルで演奏出来る事が大変嬉しく、私にとりましては初共演となります大植英次マエストロのもと、素晴らしい演奏会になります様に是非頑張りたいと思います。


「生きることの喜びとエネルギーに溢れた作品。人間を愛おしく感じます」ソプラノ・老田裕子

「カルミナ・ブラーナ」は 神戸市混声合唱団在籍中に定期演奏会でソリストを務めさせていただき、それ以来今回が2度目になります。ですので、血湧き肉躍る合唱部分もその時にたくさん練習しました。やはりなんと言っても合唱の持つパワーがすごいと思っています。
今回のお話をいただいてから、大植英次マエストロのカルミナを聴くチャンスがあり、駆けつけました。マエストロの音楽の熱いパワーに会場中がぶわっと引き込まれて、そのエネルギーに翻弄され、心拍数が上がったままのあっという間の時間でした。今回ご一緒させていただくのをたのしみにしております。

――この作品と、ソプラノというパートについて。

世の中の大きな流れのなかでは、ひと1人の存在は小さくて、運命の大きな抗うことのできない流れに巻き込まれているように見えます。
しかしその中で、1人1人が美しい魂を持っていて、人生を精一杯生きている。逆にいうと、ひとりの日常の積み重ねが大きな流れ、運命を作っていると感じられ、1人の存在は大きく尊いものだと再認識させられます。
オルフの音楽のなかで、世界は自然も人も生きることの喜びとエネルギーに溢れています。それは決して美しいものだけでは無いのですが(特に第2部「酒場で」)、それも含めた人間というものを愛おしく感じます。
ソプラノソロは若者と乙女の恋が歌われる第3部「愛の誘い」からになります。
恋に悩む心のゆれ、葛藤、そして自分で道を選ぶ決意を歌う「天秤棒に心をかけて」は本当に美しい音楽です。ピュアなところから、花開き愛を受け入れるまでの音楽の振れ幅は広く、喜びを持ってしなやかに歌いたいと思っています。

――吹奏楽との共演については、いかがですか。

オーケストラ版より更に増した運命の女神のパワーを感じられるのは、間違いないのではないでしょうか。そして大阪フィルハーモニー合唱団(2017年の演奏も素晴らしかった!)、岸和田市少年少女合唱団と共に、日本を代表する吹奏楽団オオサカ・シオン・ウィンド・オーケストラの創立100記念を祝う今回のコンサート。是非、たくさんの方々に聞いていただきたいです!


「色彩の豊かさに驚愕。吹奏楽版ならではの迫力が楽しみです」テノール・ 清水徹太郎

「カルミナ・ブラーナ」では過去3回、テノールソロを務めさせていただいております。合唱でも2回、出演させていただきました。

特に印象に残っているのは、初めて「カルミナ・ブラーナ」を経験した京都市立芸術大学在学時の合唱の授業でした。曲のあまりの迫力と色彩の豊かさに驚愕しました。しかし学生が演奏するには非常に難易度が高く、各パートの音域の広さに四苦八苦した思い出があります。

この作品のテノールソロの登場は、『白鳥が焼鳥になるアリア』の一曲だけですが、その苦しみを表現するために非常に高音域を求められています。通常よりかなりハイポジションで歌えるよう身体の準備と心構えを持って臨んでいます。

――本公演への抱負をお聞かせください。

吹奏楽版との共演は今回が初めてになります。オーケストラ版との違いや、吹奏楽版ならではの迫力を非常に楽しみにしております。

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